公募こぼれ話04

つづきです。
観光ドライブから帰って旅館に着いたのは、まだ明るいうちだった。
でも、とにかく酔ったし疲れたので、早々にベッドに寝転ぶ。
と、トントンとドアをノックする人がいる。
出てみると、おじさん達が数人、にこやかに立っていた。
「我々は、桜江町の郵便局の者ですが、
 今夜たまたま、ここで飲んでましてね。どうです? 
 一緒に一杯やりませんか?」
どうです?と言いながら、有無を言わさず引っぱり出された感がある。

旅館の食堂で宴会が始まる。
「遠いところをよう来んさった。飲みんさい」
「さすが東京の人は違うの〜。わしら、式ちゅうたら、
 ネクタイと決まっとるんじゃが、久保さんはオシャレじゃの〜」
そういえば、ネクタイはせず、ジャケットに詰めえりのシャツを
着ていたのだった(妻の見立てである)。

きりのいい所で引き上げようと考えていたら、
後から郵便局長さんがいらっしゃる。
「久保さんは、ええ人じゃの〜。気取らんところが、ええ!
 ここじゃ、なんだ・・ええ店を紹介しますけん、ちょっと
 つき合うてください」
うへえ・・・
どんどん酔いが回るよ〜。あ、歩けるかな?
ふらつきながらついて行く。
近くの焼き鳥屋さんに入る。まだまだ夜は長いのだった・・・。


それにしても、みなさん、人なつこくて情に厚い人たちである。
その後も何度か公募で賞を頂き、あちこち招待されたけれど、
この桜江町ほど温かく迎えてくださった所はない。
本当に、ありがたい事でした。


ぼくは、公募は「縁」だと思っております。
絵やデザインの技術も必要だし、キャラクターのアイデアも、
それに込める想いも、もちろん大切ですけど・・・。
最終的には縁だと。

だから、作るときは開き直って、自分のやりたいようにやる。
ウケをねらったりしない。媚びない。
一番描きたいものを描いて、それでダメだったら、
縁がなかったのだと思うようにしています。

よく野球に例えるのですが、
「三振か、ホームランか・・」というくらいに、思い切って
大振りしていいのだと。
仕事では三振はできないけど、公募はそれでいい。
そう思っているのです。


On the Sunny Side of the Street  Diana Krall
by tobelune | 2012-03-10 00:15 | 思い出 | Comments(0)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話! とべるね画伯も活躍。


by tobelune