2012年 08月 02日
「晶太の夏休み」銀のあぶく(2)
川の中は、深く濃い緑がかった影の世界であった。
晶太は、泳ぐのをあきらめて、
昇りゆく銀のあぶくを見つめていたのだ。
もう終わりだと思ったとき、片方の足がついた。
川の底だった。
水面は、ずっと上だ。
ぱぱぱっと、頭の中がすばやく回転し始めた。
「そうか! 泳がれへんのに泳ごうとするから、アカンねん」
晶太は、思いきって体を深く沈めた。
そして、なんと、
手で川底の石をつかみ、足で砂利をけって、
はうようにして浅瀬をめざした。
空気を求めて勝手に口が開き、水をがばがば飲んでしまう。
それでも、必死で手足を動かす。
時間が長く感じられる。
自分の体は、スローモーションのようだ。
やっと登り坂になったと思った次の瞬間、明るさが戻った。
ザッと、川面から上半身が出た。
空気だ!
そのとたん、すごい勢いで水を吐いた。
何度も吐いた。
吐きながら、晶太は少し泣いた。
けれど、もう、涙だか水だか、区別がつかなかった・・・。
あたりを見回すと、明るい日射し、木陰でセミが鳴いている。
「生きてた・・」
体がガクガクしているのを感じながら、晶太は川から上がった。
自分の力で、ちゃんと生きて帰って来れたのだ。
お兄ちゃんは、寝たままだった。
ほんの1分にも満たない間の出来事だったのかも知れない。
タオルでぬれた体をふきながら、晶太は、川の全景を見渡した。
遠くで、子どもの笑い声がする。
今のことが、うそみたいだ。
お兄ちゃんのとなりに寝転がると、
岩の温かさが伝わってきて、本当にほっとする。
太陽がまぶしいのも、何かうれしかった。
胸に手を当てると、
心臓が、とくんとくんと脈打っていた。
夏の思い出
晶太は、泳ぐのをあきらめて、
昇りゆく銀のあぶくを見つめていたのだ。
もう終わりだと思ったとき、片方の足がついた。
川の底だった。
水面は、ずっと上だ。
ぱぱぱっと、頭の中がすばやく回転し始めた。
「そうか! 泳がれへんのに泳ごうとするから、アカンねん」
晶太は、思いきって体を深く沈めた。
そして、なんと、
手で川底の石をつかみ、足で砂利をけって、
はうようにして浅瀬をめざした。
空気を求めて勝手に口が開き、水をがばがば飲んでしまう。
それでも、必死で手足を動かす。
時間が長く感じられる。
自分の体は、スローモーションのようだ。
やっと登り坂になったと思った次の瞬間、明るさが戻った。
ザッと、川面から上半身が出た。
空気だ!
そのとたん、すごい勢いで水を吐いた。
何度も吐いた。
吐きながら、晶太は少し泣いた。
けれど、もう、涙だか水だか、区別がつかなかった・・・。
あたりを見回すと、明るい日射し、木陰でセミが鳴いている。
「生きてた・・」
体がガクガクしているのを感じながら、晶太は川から上がった。
自分の力で、ちゃんと生きて帰って来れたのだ。
お兄ちゃんは、寝たままだった。
ほんの1分にも満たない間の出来事だったのかも知れない。
タオルでぬれた体をふきながら、晶太は、川の全景を見渡した。
遠くで、子どもの笑い声がする。
今のことが、うそみたいだ。
お兄ちゃんのとなりに寝転がると、
岩の温かさが伝わってきて、本当にほっとする。
太陽がまぶしいのも、何かうれしかった。
胸に手を当てると、
心臓が、とくんとくんと脈打っていた。
夏の思い出
by tobelune
| 2012-08-02 02:41
| 子どものころ
|
Comments(2)