2016年 08月 10日
冒険の旅 6
民宿で1泊、兄の寮で2泊、そして4日めの朝早く、晶太は兄に別れを告げた。
昨日、3日めは兄貴の車でドライブ。
「白壁の町倉敷」をゆっくり観光し、
さらに鷲羽山に登って、そこから瀬戸内の夕景を眺めた。
黄昏れの美しさ、せつなさ、やがて街の灯が次々とまたたき始めて・・・
あの灯りのひとつひとつに、人生があるんやなあ。
そんなことを考えていた。
その夜も寮に泊めてもらう。
本当は、寮に泊めていいのは1泊だけらしくて、
裏口からこっそり忍び込み、兄貴の部屋へ。
K製鉄さん、ごめん(もう時効だよね)。
おかげで、すっかり元気回復! 兄貴に手を振って、帰り道についた。
来る時とまったく同じ道では面白くないので、平行して走る別の国道を進む。
なので、もう、おまわりさん達にも会わなかった(笑)。
鼻歌を唄いながらペダルを踏む晶太少年。
この頃に流行っていたのが、コカ・コーラのCMソングにもなった
「愛するハーモニー」である。
♪この広いぃ地球の~どこまでも~・・・
○
何んのトラブルもなく(期待してた?)、すこぶる順調に走る。
すいすいと県境を越え、兵庫に戻って来た。
姫路まで来て余裕だったので、お城を見てみたいと思った。
小学生の時に遠足で来た覚えはあるものの、
お城の印象はおぼろげであった。
国道からはずれて北上すると、
姫路はさすがに都会という感じである。大きいビルが建ち並ぶ。
大通りを行くと、ビルの向こうに突然、姫路城が現れた。
白鷺城と言われるだけあって、
白くて優雅、お姫さまを連想させる綺麗なお城だ。
天守閣を仰いで、しばし見とれる。
○
加古川を過ぎたあたりで、夕闇が迫ってきた。
さてさて、最後の1泊をどこにすればいいのか?
普通の市街地である。
これでは、野宿もしづらい・・。
「どうしようか?」
国道はいつしか、国鉄の線路と平行して走っていた。
小さな駅があったので、ちょっと寄って休憩する。
「土山(つちやま)」という駅だった。
駅舎は木造で、どこか田舎っぽくてステキだった。
待ち合い室も、木のベンチが長くぐるっと続いており、古き良き時代を感じさせてくれた。
雰囲気が気に入ったので、ここで夜を明かそうと決めた。
待ち合い室でじっと座りながら、晶太は何を考えていたのだろう?
やがて、駅を行き来する人も途絶えて。
少年ひとりになった。
10時を回って、
駅員さんがひとり、声をかけてきた。
「君、どうしたの? もうすぐここも閉めるよ?」
「えっと、あの、すいません。自転車で旅をしていまして・・今夜ここで過ごしちゃだめですか?」
「ここで? そりゃちょっとなあ・・・」
駅員さん、困った顔して他の駅員さんのところへ。
また戻ってきて、
「ちょっと、こっちへ来てくれる?」
(あれれ? また家出と思われたかも? 困ったな・・)
駅員さんについて行くと、改札をくぐり、駅舎の奥に通された。
駅員さん達の休憩する場所というか、あるいは宿直室なのか、
ゆったりしたソファに座らせてもらう。
「で、家はどこなの?」
また、これだ。
事情をかいつまんで説明する。
「なるほど、わかった。今夜はここで眠ればいいよ」
ほっとする晶太。
「ただし、親御さんが心配されているだろうから、電話はするよ? いいね?」
「はい・・・」
いやとは言えない。
まだ半分、疑われているように思える。親に確かめるつもりなのか。
けれど、電話なんかされると余計に心配するはず。
あ~~~~、絶体絶命のピンチ!
まだつづく
The Long and Winding Road
昨日、3日めは兄貴の車でドライブ。
「白壁の町倉敷」をゆっくり観光し、
さらに鷲羽山に登って、そこから瀬戸内の夕景を眺めた。
黄昏れの美しさ、せつなさ、やがて街の灯が次々とまたたき始めて・・・
あの灯りのひとつひとつに、人生があるんやなあ。
そんなことを考えていた。
その夜も寮に泊めてもらう。
本当は、寮に泊めていいのは1泊だけらしくて、
裏口からこっそり忍び込み、兄貴の部屋へ。
K製鉄さん、ごめん(もう時効だよね)。
おかげで、すっかり元気回復! 兄貴に手を振って、帰り道についた。
来る時とまったく同じ道では面白くないので、平行して走る別の国道を進む。
なので、もう、おまわりさん達にも会わなかった(笑)。
鼻歌を唄いながらペダルを踏む晶太少年。
この頃に流行っていたのが、コカ・コーラのCMソングにもなった
「愛するハーモニー」である。
♪この広いぃ地球の~どこまでも~・・・
○
何んのトラブルもなく(期待してた?)、すこぶる順調に走る。
すいすいと県境を越え、兵庫に戻って来た。
姫路まで来て余裕だったので、お城を見てみたいと思った。
小学生の時に遠足で来た覚えはあるものの、
お城の印象はおぼろげであった。
国道からはずれて北上すると、
姫路はさすがに都会という感じである。大きいビルが建ち並ぶ。
大通りを行くと、ビルの向こうに突然、姫路城が現れた。
白鷺城と言われるだけあって、
白くて優雅、お姫さまを連想させる綺麗なお城だ。
天守閣を仰いで、しばし見とれる。
○
加古川を過ぎたあたりで、夕闇が迫ってきた。
さてさて、最後の1泊をどこにすればいいのか?
普通の市街地である。
これでは、野宿もしづらい・・。
「どうしようか?」
国道はいつしか、国鉄の線路と平行して走っていた。
小さな駅があったので、ちょっと寄って休憩する。
「土山(つちやま)」という駅だった。
駅舎は木造で、どこか田舎っぽくてステキだった。
待ち合い室も、木のベンチが長くぐるっと続いており、古き良き時代を感じさせてくれた。
雰囲気が気に入ったので、ここで夜を明かそうと決めた。
待ち合い室でじっと座りながら、晶太は何を考えていたのだろう?
やがて、駅を行き来する人も途絶えて。
少年ひとりになった。
10時を回って、
駅員さんがひとり、声をかけてきた。
「君、どうしたの? もうすぐここも閉めるよ?」
「えっと、あの、すいません。自転車で旅をしていまして・・今夜ここで過ごしちゃだめですか?」
「ここで? そりゃちょっとなあ・・・」
駅員さん、困った顔して他の駅員さんのところへ。
また戻ってきて、
「ちょっと、こっちへ来てくれる?」
(あれれ? また家出と思われたかも? 困ったな・・)
駅員さんについて行くと、改札をくぐり、駅舎の奥に通された。
駅員さん達の休憩する場所というか、あるいは宿直室なのか、
ゆったりしたソファに座らせてもらう。
「で、家はどこなの?」
また、これだ。
事情をかいつまんで説明する。
「なるほど、わかった。今夜はここで眠ればいいよ」
ほっとする晶太。
「ただし、親御さんが心配されているだろうから、電話はするよ? いいね?」
「はい・・・」
いやとは言えない。
まだ半分、疑われているように思える。親に確かめるつもりなのか。
けれど、電話なんかされると余計に心配するはず。
あ~~~~、絶体絶命のピンチ!
まだつづく
The Long and Winding Road
by tobelune
| 2016-08-10 07:10
| 旅るね
|
Comments(2)