とべるくんのぼうけん10

やっちゃんは、とべるくんより、ひとつしたのこでした。

そのひ、とべるくんとやっちゃんがあそんでいたら、
みちばたに、ライターがおちていたのです。
ぎんいろで、ちょっとちゃいろく、さびていました。

とべるくんは、まえにも、
おにいちゃんと ライターをみつけたことがあります。
うえの まるいのを、ゆびでこすってまわすと、
ひばながとぶのを しっていました。
「こうやるんやで」
ジャッジャッ☆
やっちゃんに、ひばなをみせてあげました。
「かしてかして」
やっちゃんも、やりたいのです。
でも、とべるくん、
「やっちゃんはちいさいから、あかん。あぶないねんで」
と、おにいちゃんぶって いいました。

おこったやっちゃんは、
てにもっていたオモチャのかたなを、ふりました。
オモチャといっても、ブリキのかたなです。
きれないようになってはいても、かたい。
これで、あたまやうでを めったうちされたから、たまりません。
とべるくんは、ぼこぼこにされました。

ライターをすてて、にげました。
あたまもおでこも、いたくていたくて・・・
うでも、ジンジンしました。
でも、じぶんよりちいさいこのまえで、
なくのだけは、いやでした。
なみだを ぐっとこらえて、いえまでのみちをあるきます。

ところが、もうすぐいえにつく というところで、
おんなのこにばったり、あってしまいました。
ふたつくらいうえの おねえちゃん。
おかっぱあたまで、
まつげのながい きれいなかおだちで、
とべるくんは、なんとなくすきだったのです。

おねえちゃんのかおをみたとたん、
なぜでしょう?
とべるくんのなみだが、どっとあふれてしまいました。
「うああ〜〜〜ん、ああ〜〜〜ん・・・」
おおごえで ないてしまうのでした。

びっくりするおんなのこのよこをぬけて、
とべるくんは、なきながら いえにかえりました。
からだじゅうのいたみと、はずかしさと、くやしさと・・・。

とべるくんが、こんなに いたいめにあったのは、
これが、さいしょでさいごだったかも。
「これやから、ちいさいガキはきらいや」
と、いったかどうかは、さだかではありません。



Rose Garden  Lynn Anderson




*「やっちゃん」は仮名です。念のため。
by tobelune | 2012-04-19 00:03 | 子どものころ | Comments(0)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話! とべるね画伯も活躍。


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