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「晶太の夏休み」銀のあぶく(2)

川の中は、深く濃い緑がかった影の世界であった。
晶太は、泳ぐのをあきらめて、
昇りゆく銀のあぶくを見つめていたのだ。

もう終わりだと思ったとき、片方の足がついた。
川の底だった。
水面は、ずっと上だ。
ぱぱぱっと、頭の中がすばやく回転し始めた。


「そうか! 泳がれへんのに泳ごうとするから、アカンねん」
晶太は、思いきって体を深く沈めた。
そして、なんと、
手で川底の石をつかみ、足で砂利をけって、
はうようにして浅瀬をめざした。
空気を求めて勝手に口が開き、水をがばがば飲んでしまう。
それでも、必死で手足を動かす。
時間が長く感じられる。
自分の体は、スローモーションのようだ。

やっと登り坂になったと思った次の瞬間、明るさが戻った。
ザッと、川面から上半身が出た。
空気だ!
そのとたん、すごい勢いで水を吐いた。
何度も吐いた。
吐きながら、晶太は少し泣いた。
けれど、もう、涙だか水だか、区別がつかなかった・・・。

あたりを見回すと、明るい日射し、木陰でセミが鳴いている。


「生きてた・・」
体がガクガクしているのを感じながら、晶太は川から上がった。
自分の力で、ちゃんと生きて帰って来れたのだ。

お兄ちゃんは、寝たままだった。
ほんの1分にも満たない間の出来事だったのかも知れない。
タオルでぬれた体をふきながら、晶太は、川の全景を見渡した。
遠くで、子どもの笑い声がする。
今のことが、うそみたいだ。

お兄ちゃんのとなりに寝転がると、
岩の温かさが伝わってきて、本当にほっとする。
太陽がまぶしいのも、何かうれしかった。
胸に手を当てると、
心臓が、とくんとくんと脈打っていた。

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夏の思い出
Commented by みさちん at 2012-08-02 09:48 x
この雲~

思いっきり 夏
って感じですね~♪
Commented by tobelune at 2012-08-02 23:58 x
はい、ありがと〜〜。
この文章を初めて書いたのが、2007年の夏でした。
ので、この雲も5年前のです〜。
by tobelune | 2012-08-02 02:41 | 子どものころ | Comments(2)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話!


by tobelune