2013年 05月 29日
さとしの青春 5
「オレ、大阪に行こうと思うんス・・・」
さとしの言葉に、ぼくは少しあわてた。
「大阪?! 誰かいるの?」
「いえ・・・
オレ、やりたい事、あるんです。
久保さん、笑うかもしれないけど・・・」
「ん?」
「オレ、お笑いをやりたいんスよ。
大阪で吉本に入りたいと思って・・・」
絶句してしまう。
いきなり、吉本って・・・
いや、笑っちゃいけないとは思うんだけど。
もちろん、彼は真剣である。
う〜〜〜ん・・・どうしたもんかな?
さとしは面白いコだけど、
はたして、そこまでの才能があるのか?
「あのね、お笑いって、そんなに甘くないと思うよ?」
と言うべきなのか。
いや、しかし。
やってみなくちゃ分からない。
彼は若いんだし、何事も経験かも知れない。
好きな事のために苦労するのは、悪くない。
ぼく自身、貧乏覚悟でイラストレーターを目指している。
人の夢をさえぎる事なんてできない。
でも、無理してないだろうか?
ここを出て行くための口実だったりしないか?
彼の目を見つめる。
固い決意の目に思えた。
「今から、夜行で大阪へ行きます」
「無茶だよ、ツテもないんだろ?」
ぼくの気持ちも揺れていた。
引き止めたい気持ちとウラハラに、
ひとりになりたい気持ちもあったのは確かだ・・・。
田端の駅で、さとしを見送った。寒い夜だった。
サイフにありったけのお金を渡した。
お気に入りの手袋も、あげた。
「がんばれよ」
「久保さん・・ありがとう・・・」
涙声になるさとしだった。
その後、大阪で住み込みのバイト先を見つけ、
頑張っているとの連絡があった。
けれど、やがてそれも途絶える。
ぼくも引っ越したり、いろいろあって。
あれからほぼ30年。
さとし、どうしてるだろう?
お笑い芸人になった様子もないし・・・。
あの冬の夜を思うと、少し胸が痛い。
青春の光と影 カッサンドラ・ウィルソン
さとしの言葉に、ぼくは少しあわてた。
「大阪?! 誰かいるの?」
「いえ・・・
オレ、やりたい事、あるんです。
久保さん、笑うかもしれないけど・・・」
「ん?」
「オレ、お笑いをやりたいんスよ。
大阪で吉本に入りたいと思って・・・」
絶句してしまう。
いきなり、吉本って・・・
いや、笑っちゃいけないとは思うんだけど。
もちろん、彼は真剣である。
う〜〜〜ん・・・どうしたもんかな?
さとしは面白いコだけど、
はたして、そこまでの才能があるのか?
「あのね、お笑いって、そんなに甘くないと思うよ?」
と言うべきなのか。
いや、しかし。
やってみなくちゃ分からない。
彼は若いんだし、何事も経験かも知れない。
好きな事のために苦労するのは、悪くない。
ぼく自身、貧乏覚悟でイラストレーターを目指している。
人の夢をさえぎる事なんてできない。
でも、無理してないだろうか?
ここを出て行くための口実だったりしないか?
彼の目を見つめる。
固い決意の目に思えた。
「今から、夜行で大阪へ行きます」
「無茶だよ、ツテもないんだろ?」
ぼくの気持ちも揺れていた。
引き止めたい気持ちとウラハラに、
ひとりになりたい気持ちもあったのは確かだ・・・。
田端の駅で、さとしを見送った。寒い夜だった。
サイフにありったけのお金を渡した。
お気に入りの手袋も、あげた。
「がんばれよ」
「久保さん・・ありがとう・・・」
涙声になるさとしだった。
その後、大阪で住み込みのバイト先を見つけ、
頑張っているとの連絡があった。
けれど、やがてそれも途絶える。
ぼくも引っ越したり、いろいろあって。
あれからほぼ30年。
さとし、どうしてるだろう?
お笑い芸人になった様子もないし・・・。
あの冬の夜を思うと、少し胸が痛い。
青春の光と影 カッサンドラ・ウィルソン
by tobelune
| 2013-05-29 08:08
| 思い出
|
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