宝探し 12

ふるさと

実家に電話してみると、母が出ました。
「あ、お母さん? 突然やけど、今、伊丹に来てるんよ。
今から行ってもええかな? お母さんひとり?
うん、今夜東京に戻るから、ちょっと寄るだけやから。
何も要らんからね。じゃ、これから行きますー」

Tくんが車で送って行くよと言ってくれるので、甘えることにしました。
この3日間、Tくんに甘えっぱなしでしたが、もうお別れです。
実家の前で車を降りて、彼と握手。
「ありがとう。またメールします」

家に入りました。
母に会うのは、何年ぶりでしょう? 12年ぶりかも? 親不孝者です・・・。
母は、今年88歳、米寿でした。(ありがたいことに、ボケはありません)
ダイニングのテーブルで二人座って、お話しました。
こうして二人でしゃべるのって、めったにない事でした。

同窓会でこっちへ来たことを報告して、
「ふたば幼稚園」の子と会えた話をしました。
すると、母がぼくの幼稚園時代のことを話してくれました。
「先生が言うにはな・・・子どもらに質問なんかしてもな、
俊明さん(ぼくの本名)は、絶対に手を上げないんやて。
わかってるのに、ただじ〜っと聞いているような子やったらしいわ(笑)。
ひとりで、ぼ〜〜っとしてる子やったらしい。
ただ、絵を描いたり、図工で何か作ってるときだけは、にこにこと
笑顔になるんやて・・・」

あ、あははは。そうやったんか〜?
もう、その頃からすでに・・・今と変わらんやん。笑えるなあ〜。

「ぼくも、今年60、還暦やで、お母さん? 年取ったやろ?
でも、こうして帽子を被ると、若く見えるやろ?(笑)
久保さん、若いですねえって、よく言われるねんで。ははは」
母を笑わせて、1時間くらいは居たのかな・・・。
突然すぎて会えなかった兄に、手紙を書いて置いた。

話しているうちに台風は去って行ったらしく、雨はすっかり上がる。
「じゃ、そろそろ行くね。お母さん、元気でね」
玄関で母の手を握りしめる。
(もう会えないかもという不安がよぎる・・・)
努めて笑顔で歩き出す。
もう一度振り返り、手を振って、小さくなった母と別れた・・・。



母に会えてよかった。けど、この悲しさ、淋しさは何だ。
雨上がりの懐かしい町・・・子どもの頃遊んだ公園の横を通り、
線路に沿って駅に向かいました。

久々に乗る阪急電車。チョコレート色の車両とグリーンの座席が懐かしい!
一路、大阪へ。
新幹線は、台風の影響ほとんどなく、流れていました。ほっとする。
帰りの「のぞみ号」の中では、恒例の「柿の葉寿司」を頬張ります。
いつものお楽しみ♪



さて、宝探しの旅も終盤です。
たくさんの人に再会できて、人生を見直すことができました。
マンガの「ワンピース」じゃないけれど、
ひとつながりの秘宝を感じ取る旅だったようです。
うれしくて、切なくて、ありがたくて・・・・・・

あと、ぼくには、どのくらいの時間があるのだろう?
いい仕事をしなくては。
やるべき事は見えているんですが・・・実力が追いつかないというか・・・
ああ、やらなくちゃ。
本当にやりたいことをやらなくちゃ。
次の世代に宝の地図を残してから、天国に行きたいです。

長い文章を読んでくださって、ありがとうございました。


おしまい






カントリーロード
by tobelune | 2014-08-26 09:59 | 旅るね | Comments(0)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話! とべるね画伯も活躍。


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