つぶ拾い

春になると思い出すことがあって・・・

もう、28年くらい前の話、
結婚した当初のころだったと思います。
彼女の実家(気仙沼)の、すぐ裏に浜があって、歩いて2、3分で行ける。
砂浜が広がっていて、その両脇が岩場の潮溜まりになっている。
そこでよく、「つぶ拾い」をしたものでした。



妻とふたりで、ザルやバケツを持って、浜へ下りる。
「つぶ」というのは、丸っこい巻貝のことで、地方によって呼び名がちがう。
「クボガイ」とも呼ばれている。
直径2センチ程度の小粒な貝で、塩ゆでにして食べるのです。

これがもう、磯の潮溜まりの、そこら中にコロコロいる。
探して取るんじゃなくて、ただ拾うだけ。なので、「つぶ拾い」です。
ただ、なるべく大きいのを選ぶことは大事です。
あとで、爪楊枝で身をほじり出すのに、小さいのは面倒ですから(笑)。

磯遊びしながら、美味しいものを収穫できる。
こんな楽しいことは、ありません。なんて豊かな海。

ある日、たくさん取って、そろそろ帰ろうというときでした。
岩場と砂浜の間くらいの場所で、
波に洗われている低い岩にちょこんと、出っ張りがあるのを見つける。
通りがかりに、
「これがつぶだったら、でっかくてスゴイな・・・でも、まさかな、あはは」
そう言いながら、コンと軽く蹴って、行き過ぎようとした。

そしたら、その岩の出っ張りが、「ぐにゅう・・」とわずかに動いたのです。
「えええっ?!」
笑いながら行こうとしていたふたり、思わず二度見です(笑)。
まさかのまさか。
手で引っぱると、ポコンと取れて。
それは、本当にでっかい、直径3センチ以上はある、つぶでした!
貝殻に海草まで生やして擬態しているので、
これを貝と思う人が、いなかったんでしょう。
何年も生き延びて来た、運のいいつぶだったのでしょう。

それを見つけてしまった。
ぼくにしてみれば、「ラッキー!! オレってすごい!」なのでしたが、
貝にとっては、かわいそうだったかも知れません。
が、喜んで家に帰り、塩ゆでにしました。

お酒のつまみというよりは、もう、おやつですね。
どんぶりに一杯、どんと出てくる。
昼間っから、爪楊枝で貝をほじほじして、くるりんと身を出し、
口に放り込む。磯の香り。歯ごたえ。
小さいので、いくらでも食べられる。
ほじほじ、くるりん。ほじほじ、くるりん。ほじほじ、くるりん。
きりがない。
やがて、手が疲れておしまいになる。

食べたあとに、
「ん? あれー? なんか、頭がふらっとする・・・
疲れてるのかなあ、オレ?」
ということがあった。
「あ、からつぶ、たべたでしょう?」と、道子ちゃんが言う。

「からつぶ」というのは、普通のつぶより、とんがった形の貝。
これは、名前の通り、辛い部分があって、
それは、ある種の毒らしくて、食べ過ぎると、ふらふらっとするのです。
酔っぱらったような感じになる。
よく知ってる人は、ちゃんと辛い部分をよけて食べるらしい。
幻覚症状は、ありません(爆笑)。



なんか、そういうことをふと、思い出しました。
あの豊かな海辺は、大震災のあと、どうなったのでしょう。
今も、つぶはいるのだろうか?






カントリー・ロード   J・デンヴァー
by tobelune | 2015-04-15 15:44 | 思い出 | Comments(0)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話! とべるね画伯も活躍。


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