晶太の夏休み 12

りゅうじんさんのせなかにのって、空をとびました。
カッパのおやこもいっしょです。
くもの中をぎゅんぎゅん行きました。

先生、りゅうが空からおりるとき、
どうやって人に見られへんようにすると思いますか?
それは、こうです。
空の上では大きかった体を、少しずつ小さくしながら、
ゆっくりとおりていくねん。
どんどんどんどんちぢんで、林の中におりたときは、もう
トカゲくらいになっていました。
ぼくのうでにくっついて、かわいかった。

「あれ? カッパさんは?」
二人がいない。まわりを見まわした。
「おーい、ここやここや」
足もとで声がするので見たら、カッパさんたちも小さくなってた。
手のひらにのるくらい小さい。
りゅうじんさんがわらいながら、
「人に見つかるとめんどうでな。ちぢんでもらったのじゃ」

りゅうじんさんとカッパさんたちを、かたにのせて歩く。
晶太よ、かおをかくした方がよいのお」
りゅうじんさんが言うので、
そのへんにはえてたフキの大きいはっぱに二つあなをあけて、
お面を作ってかおをかくしました。

だんだんの田んぼのよこの石だんをおりて行く。
小さな沢が見えました。沢がにのいるところです。
砂のカベの下の方に、ももいろのヤマヒメさまが、さいてるはずです。

「あ、だれか、いる?」
「しっ! 晶太よ、声を出してはいかん」

そこにいたのは、お兄ちゃんでした。
沢ガニをつかんであそんでる。
そして、もうひとり、お兄ちゃんとしゃべってるのは・・・

(あれは、ぼく? どう見てもぼくやん。
 なんで?! なんでぼくが、もひとりいるのん??)

つづく













*

# by tobelune | 2021-08-16 01:10 | 子どものころ | Comments(0)

晶太の夏休み 11

8月17日はれ時々くもり

あさからカッパのお父さんについて、山にのぼりました。
カッパの子、かんぺいくんもいっしょです。
沢にそってどんどんのぼる。
カッパは、あつさによわいです。
つかれたらすぐ沢の水に入ります。
体をひやして、元気になって、またのぼります。

とちゅう、いくつか薬草やきのこを見つけてとりました。
「やっぱり、ヤマヒメさまは、ないのお。
 むかしは、このへんによくさいとったもんやが・・」
「ヤマヒメさま?」
お父さんに、ぼくはききました。
「うむ。ヤマヒメノカミカザリという薬草や。
 みな、ヤマヒメさまとよんどる。
 ほんにかわいらしい、ももいろの花がさきよるんや」

ぼくは、山のおひめさまをそうぞうしました。
なんでか、りゅうのひめさまがうかんできました。
きれいなひめさまが、かみに花をつけているところ・・・

「あれ? ももいろの花?!」
ぼくは、ぴかっときました。
「それ、むらさきのはっぱのまん中にさく花?」
「そや、そのとおりや! 知ってるんか?」
「うん、知ってる。おばあちゃんちの近くでさいてたもん」
「な? そんな人里に? 信じられん・・」
「はっぱが、まあるくひろがってるんやろ?
 花はこのくらいで、はっぱがこのくらい・・・」
「おお、たしかにそうや。まちがいない!
 それがあれば、みょうやくは作れるでな!」

ぼくたちは、山のてっぺんに出ました。
そこで、心の中でりゅうをよびました。
「りゅうじんさん、来てください」
ぼくは、なんどもくりかえして、よびつづけました。

つづく













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# by tobelune | 2021-08-15 01:39 | Comments(0)

晶太の夏休み 10

星が出てきました。
池は、くらくてしずかなまんまです。
なんかこわいし、さむいし、おなかもすいたし。
もう家にかえりたい。ごはんたべたい。
ぽわんとお母ちゃんの顔がうかんで、なみだが一つ、こぼれてん。
そしたら・・・

ザバザバッ

池の水がとびちり、なにかとび出した。
小さなカッパ?
「うんめえ〜〜っ! なにこれ、なにこれ?
 きゅうりにぬったら、とろんとしてうめえよ〜〜っ!?」
男の子のカッパみたい。
やっぱり、あたまにおさらがある。
かじったきゅうりをもってわらってる。
「おまえがくれたんか? ひとり? どっからきたん?」
この子が元気いいので、こわさがきえました。

「あ、ぼく、晶太。
 えっと、おねがいがあって来たんやけど・・・」
「ふ〜〜ん、まっとき。父ちゃん、よんできたる」

すぐに出て来てくれました。
カッパのお父さん、ぼくより大きいけど、人の大人より小さい。

「なるほどの。りゅうのヒメさまがご病気か・・・。
 カッパのみょうやくはの、作りおきでけんのや。そのつど作るんや。
そうカンタンやないんやで?
 けど、まあ、こんなおいしいもん、もろうたしな・・・」

きゅうりといっしょにカゴに入れてたのは、みそマヨ。
みそとマヨネーズをまぜたもんです。
カッパがよろこぶと思って、ツボに入れててん。
作戦せいこうや! 思うツボ。

カッパさんのかぞくも池から上がってきて、
みんなでいっしょに、みそマヨきゅうりをかじりました。
ぱりぽり、かりぽり、楽しい音がしました。

「今夜は、うちでとまっておいで。
 明日、みょうやくの材料さがしをするからな。
 そうや、ひとつ、アレがなあ・・・」
カッパのお父さん、こまったかおになります。

「あのな、みょうやくには、いろんな薬草がいるんや。
 けど、ひとつ、このごろはどうにも見つからん草があってな。
 もう、ほろんだのかもしれんのや・・・。
 アレがなかったら、みょうやくはでけん」
 
先生、こういうとき、これを使うん?
いちなんさって、またいちなん?

つづく













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# by tobelune | 2021-08-14 08:35 | 子どものころ | Comments(4)
「ねこまめ」見本が届きました!_b0246533_11434858.jpg



先ほど、宅急便で見本が届きました〜♪

色校正で見ていても、やっぱりちゃんと製本されていると全然ちがう。
(実際、色もよくなってる!)
手に持った重み。質感。帯も付いているし。
表紙を開いて、インクの匂いを嗅ぐ。
出来立ての匂い〜。

ああ、本当に絵本になったんだなあ!!!

表紙の絵のまめこちゃん、
口から下が帯で隠れるのも、もちろん計算に入っておりました。
むしろ、この方がカワイイ♡
これは、手に取ってもらえるのでは?

帯の文章は、今日初めて知りましたが、うまい!
なかなか良いコピーだと思います。

奥付では、8月30日発行となっていますが、
もしかしたら、もう少し早めに書店には並ぶかも??
見かけたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。

よろしくお願いします。



















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# by tobelune | 2021-08-13 12:12 | えほん | Comments(12)

晶太の夏休み 09

「右かな? 左かな?」
ぼくは、どっちの道に行ったらええんか、まよいました。
そしたら、地面にきれいな虫がいたんです。
小ちゃくて、体がいろんな色に光ってる。
青やみどり、赤や金色、白いテンテンも入ってる。
めちゃくちゃきれい。

つかまえようとしたら、パーッととんでにげた。
でも、ちょっと先に下りてとまってる。
近づくと、とんでにげる。けど、またすぐとまる。
まるで、ぼくをまってるみたいや。
「道をおしえてくれてるのん?」
ぼくは、この虫くんについて右へ行くことにしました。
(先生、あとで図かんでしらべたら、ハンミョウという虫でした)

ふしぎな虫くんについて行ったら、林をぬけて丘に出ました。
そこから池が見えた。
「やったー! 虫くん、ありがとうな」
て見たら、虫くん、いなくなってた。
「あれ? 虫くーん?」
よんでも、ひぐらしの声が聞こえるだけでした。


やっと古池につきました。もう日がしずみそう。
カエルがなき出しました。
ぼくは池のそばにきゅうりのカゴをおいて、まちました。
ほんまにカッパがいるんやろか?
絵本で見たカッパを思い出したら、ちょっとこわくなりました。
「しもた!・・・かたながない・・・」
どこかに木のぼうがおちてないか、さがします。

チャポンと水の音がして、
ふりむくともう、きゅうりのカゴがない。
「あ!」
くいにげは、こまる。
「カッパさん、カッパさ〜ん。
 きゅうりもって来たのは、ぼくで〜す。
 おねがいがあるんです〜。かおを見せてくださ〜い!」

カエルの声がやみました。

つづく













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# by tobelune | 2021-08-13 07:17 | 子どものころ | Comments(0)

 空好き、猫好き、星も好き。 絵本画家 久保晶太の日常と制作ウラ話! とべるね画伯も活躍。


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